五行歌・池上サロン 歌会レポート


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[0] 五行歌・池上サロン 歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2018年10月 2日(火)16時03分40秒 p3894100-ipngn21201marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp

五行歌・池上サロン 歌会レポート





[47] 「五行歌」六月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2022年 6月22日(水)00時07分37秒 248.14.235.111.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:玉井チヨ子

 四月四日(月)
 雨で足元が悪い中を皆様ご出席です。見学者の松井さんもご一緒に始まりました。

  ウクライナ ウクライナ   紫かたばみ(一席)
  怒りと 悲しみと
  はがゆさと 無力感
  うずまいて
  歌とはならない

 歌とはならないと言いながら、リズムがあり空きの空間がとても良い上手な歌。
 ウクライナ侵略、今歌っておかなければと、まとまらず気持そのまま歌にしたと作者。

  秘密       雅蘭洞(二席)
  誰でも持ってる
  秘密
  誰にも言えない
  秘密

 言わぬが花で誰れにも言えないことがある。中味があり、作り方のうまさがあるとの評。
 誰でも幾つかの秘密は必ず持って居る。誰れにも言わず秘密と共に墓場入りと作者。

  バスの中      玉井チヨ子(二席)
  咳のでる
  前の席の方へ
  肩をトントン…と
  飴ひとつ

 とめようとするとよけいに咳込む、前の席の方へ、お節介な作者です。

  「これが戦争?     武藤義子(二席)
  私は死にたくない」
  キエフの少女の涙
  他所事とはするまい
  侵略者許すまじ

 少女の怒りと思い、作者の強い意志。とても考えさせられる歌。
 平和に暮らす人達を、侵略者が戦禍の中へ。特に子供達の姿に、怒りがこみ上げたと作者。

 三席は作品のみ紹介します。

  戦禍にある/人びとの想い/桜を/愛でる心/引き裂かれ   沙 羅(三席)

  「お友達でありがとう」/言葉/ひとつ/友が/逝く     旅 人(三席)






[46] 「五行歌」五月号歌会レポート

投稿者: 名無しさん 投稿日:2022年 5月 3日(火)09時09分18秒 254.228.132.27.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:武藤義子

 三月一日(火)
 今回はいつもの会場が、ワクチン接種の為使用できなくなりました。リアル歌会を開きたいと会場を探し、池上サロンを始めた「豆豆」を会場にしてミニランチ付きで一時~四時まで歌会を開きました。
 採点は一人四首を選びました。上位三首。

  人生は        沙 羅
  シーソー
  喜と哀
  禍と福
  生と死

 人生における喜びの裏に哀しみがある。禍と福は順にやってくる。生の延長線上には死がある。それはシーソーのようである。と作者の言葉です。喜怒哀楽や生と死について、話が盛り上がりました。

  宇宙の涯を極める    雅蘭洞
  人類の叡智
  中性子を解明する
  人類の叡智
  不戦の叡智は如何

 人類は百万年以上かけて素晴らしい文明を築き上げました。しかし”争”についての知恵は、未だに類人猿以下なのでしょうかと作者は話されました。不戦では現にウクライナで戦争が行なわれています。不戦の叡智は如何の五行目に関心が集まりました。

  「黙浴」       武藤義子
  大きな貼紙
  銭湯は温泉
  じんわりと私は
  潤*びていく    *ほと

 コロナ禍の銭湯は飛沫感染を防ぐ為、「黙浴」と書かれた貼紙があちこちにある。湯音が聞えるだけ。ゆっくりと身も心もゆるむ一時を詠みました。一行目にカギ括弧で黙浴と書かれたことで、コロナ禍だという事がわかるので良い。



[45] 「五行歌」四月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2022年 4月 6日(水)21時32分38秒 51.19.105.175.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 二月七日(月)
 東京の感染者数が一万二千人を越えて過去最多となった月曜日、十九時から二十一時までライン歌会を開いた。在宅で歌会が開けるのはコロナ禍でも有難い。出席者の声だけだが元気が出る。ゲストに旅卯さん、大島健志さん、コバライチ*キコさんの三人をお迎えして十名の出席者だった。

  眠れぬ         武藤義子(一席)
  冬の夜半
  じーんと静けさが
  音をたてて
  耳に入って来る

 音のない音の表現が良いと高得点だった。作者は底冷えの京の夜半、冷えきった空気が震える様にじーんと音となって、真っ直ぐ耳に入って来た体験を詠んだそうです。

  コトバより      コバライチ*キコ(二席)
  カラダが先に
  踊るらしい
  喜怒哀楽の
  根っこが疼く

 片仮名遣いが印象的と好評だった。作者は、大好きな田中泯の言葉から歌が生まれたそうで、体が反応して躍る、その感情の元を「疼く」と言葉にして、ようやく納まったと語っていた。

  波に逆らわず       沙 羅(二席)
  波に乗る
  いつか
  きっと
  凪が来る

 「凪」の言葉に惹かれたと好評だった。作者は、コロナという大海に逆らわず、終わる日が来る日まで、やり過ごそうと希望を詠んだそうです。

 四席は作品のみ紹介します。

  ありがとう/我々は/善意で生きる/生物/人間    旅 卯

  抗がん剤で/12 ㎏痩せた兄/泣きそうになったけど/あんまり祖父*ちゃんに似てて笑いそうになる
                                 *じい       紫かたばみ
  きみに/出会えてよかった/あの世でまた/なんか楽しいこと/しよう    大島健志

  時には大胆/時には囁き/時には惑わす/君の歌に/夢中   旅 人



[44] 「五行歌」三月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2022年 3月 8日(火)12時13分13秒 134.10.235.111.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:沙羅

 一月十日(月)
 二〇二二年の新年歌会は、ゲストの方三名がみえて、少し改まった気分で始まりました。いつものメンバーに数名の方たちが加わっただけで歌会は活性化し、違う景色が見えました。

  午前2時に       いわさきくらげ(一席)
  鳴くカラス
  だれの
  心を
  つついているのか

 帰省した際に寝つけずに聞いたカラスの鳴声をヒントに詠まれたとか。午前2時と二ではなく2を使ったのが効果的でした。

  嗅覚を          旅 人(二席)
  研ぎ澄まし
  心の欲する
  本を探す
  私は狩人

 作者は、本屋さんで書棚を巡りながら真剣に本選びをする自分は、まるで猟犬だと思ったそうです。

  あなたの窓からは、    明槻陽子(二席)
  そんな景色が見えるのね。
  沢山の今を
  体感できる
  歌の世界

 フェイスブックの五行歌を読んで、沢山の歌の世界を体感出来た喜びを表しました。

  酒が呑めるから       紫かたばみ(三席)
  大人じゃない
  惨めさを どれだけ
  呑み込めるかだ
  自分のではなく 他人の

 上から目線ですが、成人の日に大人の心構えを歌ってみました。



[43] 「五行歌」二月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2022年 2月 4日(金)23時41分58秒 249.28.105.175.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:沙羅

 十二月六日(月)
 コロナに振り回されているうちに、早、師走を迎えました。いつもの歌会に加えて、第三十一回の全国文書大会入選歌もとり上げました。令和三年を締めくくる充実した歌会でした。

  甦る声音         沙 羅(一席)
  反戦を説く寂聴さん
  九条を守る会
  そこに
  私もいた

 瀬戸内寂聴さんが九十九歳の命を使いきって亡くなりました。あの甲高いお声はもう聞けません。彼女の反戦の志を受け継がなければと思って詠みました。

  青い春の山に登り     雅蘭洞(二席)
  朱い夏の海に泳ぎ
  白い秋風に襟立て
  玄い冬空に凍えて
  死は生の了と知る

 作者は人生百年の盛衰を四季に例えて詠まれたそうです。五行目、韓愈の詩のように、棺の蓋をして人生は完成するのです。

  やさしい         紫かたばみ(三席)
  ピンクの
  皇帝ダリア
  見下*ろしているけど   *お
  見下*していない     *くだ

 背が高く花も大きいから皇帝ダリアという名前がつきました。でもやさしい花姿には皇帝の威圧感はありません。
  



[42] 「五行歌」一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年12月30日(木)23時30分10秒 92.37.105.175.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:大箭佐代子

 十一月一日(月)
 木々の葉が色づく秋を迎えゲストの菊地牧子さんも交えて十人の歌人達が集い和やかに歌会が開かれました。

  富士山を       紫かたばみ(一席)
  すべり台にして
  ぴゅーと
  冬が
  降りてきた

 「ぴゅーと」と楽しい表現、ユニークで気持ちの良い歌、童謡の世界、スケールの大きさ、子どものつぶやきを歌にした作品と皆さんの感想でした。作者のコメントは、急に冷え込んだ日に雪化粧した富士山がくっきり見えました。そんな姿をみて、いつか公園で聞いた「お山からぴゅーってくるんだよ」と言う幼子の言葉を思いだして、作りました。

  病む友の        武藤義子(二席)
  重たい言葉
  赫赫と燃える
  夕日に
  焼べたい

 赫赫との表現が素敵、重たい言葉、病む友の切なさも伝わってくる。焼べたいとの表現が素晴らしいと皆さんの感想でした。作者のコメントはいくつもの病を抱えた友のいらだち、くやしさ生死についての言葉が重たく抱えこめず赫い夕日に託す。

  孤独の          沙 羅(二席)
  原石を
  彫れば
  真の己
  顕れる

 型のみごとさ、歌のイメージがすごい、真面目に自分と向き合っている。作者の感じかたが正直である。皆さんの感想でした。作者のコメントは孤独を原石に見立てて彫っていったら自分の隠された部分にたどりつきました。

  ひたすら         旅 人(三席)
  朽ちていく
  切り株の
  傍らに
  ポッチリと芽が

 ポッチリが愛おしい、古い滅びていくもの新しいもの、世代交代、思ったことと言葉を一致させた。皆さんの感想です。作者のコメントは、何も語らず崩れていく大きな切り株から小さな芽! その愛しさを詠みました。
 



[41] 「五行歌」十二月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年12月 6日(月)16時58分58秒 119.140.150.119.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 十月四日(月)
 今年初めて感染者が百人を下回ったとニュースが流れた。ほっとしながら歌会会場へ向かうと、歌人たちが集まっていた。ライン歌会が二か月続いたので皆さんと会うのは三か月ぶりだ。
 お互いの無事に安堵しながら、ライン歌会の感想・反省から歌会を始めた。声だけでも歌会ができるのは嬉しいが、やはり、顔を見て頷きながらの歌会が一番と一致。

  甘やかせば        紫かたばみ(一席)
  つけあがるくせに
  くじけたり 折れたり
  ついには 壊れたり
  心は取り扱い注意品

「心は取り扱い注意品」の言葉に、皆さん驚くやら納得するやら、ひとしきり心について語り合いました。作者は、甘やかすとつけあがるのは私の心で、折れやすいのは息子の心。本当に難しいですと語っていました。

  豊かな沈黙        雅蘭洞(二席)
  空虚な饒舌
  今の日本には
  一見豊かな
  底深い貧困

 「豊かな沈黙/空虚な饒舌」無駄がないスッキリした出だしに惹かれた、対比が鮮やかで作者の語彙の深さが感じられたなどの評がありました。作者は、物事は外面と、内面が全く反して居る場合があって、黙って居ても、内容が豊富な場合があること、また、子ども食堂を例にとって、日本が本当に豊かなのか問いかけてみたかったと語っていました。

  楓の          旅 人(三席)
  葉先
  二㎜が
  微かに
  染まる

 「二㎜」が効いている、短く纏めて見事との評がありました。作者は、染まっていく楓をなんとか表現したくて悩み続け、やっと二ミリの行きついたと語っていました。 



[40] 「五行歌」十一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年11月 2日(火)09時08分41秒 45.133.243.49.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 九月六日(月)ライン歌会
 午後七時から九時半まで参加者九人で、題詠「君」のライン歌会を開きました。ライン歌会も三度目となると慣れてきたのでしょうか活発な発言が続きました。
 欠席歌、一歳さんの題詠に素晴らしいと賞賛が多く集まりました。

  無策         旅 人(一席)
  無自覚
  無責任
  君
  権力から下りなさい

 オリンピック対策・コロナ感染対策、全てにおいてウンザリ、よくぞ言ってくださったの評がありました。作者は筆者ですが、オリンピック開催、後手後手続きのコロナ感染に、心底嫌気がさして東京を脱出しました。自発的にマスクを付ける国民に、無策の政府は似合いません。

  君は 私を見つけ    沙 羅(二席)
  パッと笑顔になり
  煙草の火を消した
  いつもの喫煙所に
  君は もういない

 五行の形が良い。空きが効果的、映画を観ているようの評がありました。作者は、愛煙家の彼との待ち合わせは、いつも喫煙所、在りし日の姿を偲んで詠みましたと語っていました。

  貧しくても 不美人でも   紫かたばみ(二席)
  わたしにも
  魂があります!
  二百年の時空を越え
  君(ジェーン・エア)に共感

 かつての文学少女たちが、口々に懐かしいと言い合っていました。作者は映画「ガーンジー島の読書会の秘密」の台詞の中で、ジェーン・エアと同じ言葉が好きだとあったので感激して詠んだと語っていました。皆さんと引用文の使用方法について話し合いました。

 三席のお二人は棒書きで紹介します。

  君/ママー/オーイ/二度と聞けない/亡夫が呼ぶ声    髙馬和子(三席)

  改札口で別れ際/グータッチ/涙ぐむ/八歳の君/その優しさ ずーっとネ   大箭佐代子(三席)



[39] 「五行歌」十一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年11月 1日(月)21時28分15秒 45.133.243.49.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 八月二日(月)ライン歌会
 八月二日(月)十九時から二十一時まで、九名でライン歌会を始めた。通常歌会の予定で会場も確保していたのだが、五回目の緊急事態宣言となったので、急遽ライン歌会に切り替えることとなった。
 始めは緊張して声も小さかったが、慣れるにしたがって、コメントもしっかりして、笑い声もおこり楽しい歌会となった。但し、事前に作品を配布し、採点して返却する事務手続きが必要であった。
 通常歌会を開くことができなくなった時の為に、池上サロン・ライングループを作っていたので功を奏した。司会は旅人。

  時の        沙 羅(一席)
  淘汰を経て
  残ったものが
  私の
  真実

 今在る自分が、結局私なんだと思うと共感の声が多かった。作者は、コロナの自粛生活で振り返る時間ができて、気づかされた私の真実を歌に詠んだと語っていました。

  何気ない      玉井チヨ子(一席)
  会話の中に
  人間の
  本質が
  見え隠れする

 同じ体験をしたと皆さんが賛同していました。作者は、思いやりの心や気遣いの心等は何気ない会話から見えてくると思ったので、歌にしたと語っていました。

  一人臥している日    武藤義子(二席)
  コトコトと台所に
  人の気配
  ただ それだけで
  心満たされる

 一人住まいは自分の音しかしない。体調が悪い時の心細さは言葉にできないくらいと皆さんが語っていた。作者は、体調が悪く臥せっていた時、お嫁さんの料理を作る音が嬉しかったので詠んだと語っていました。

 紙面の関係で、三席は縦書きにします。

  零れるほどの/真っ白な/山法師/一本/凜と立つ    旅 人(三席)



[38] 「五行歌」十一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年11月 1日(月)20時54分46秒 45.133.243.49.ap.yournet.ne.jp  返信

レポート担当:コバライチ*キコ

 七月五日(月)
 歌会の前、有志でネパールレストランへ。蝶豆花の乾燥花弁を入れるだけで青く変化する水(無味無臭)と共に、ほどよい辛さの薬膳カレーを頬張ったおかげか(?)、歌会でも活発に遠慮なく意見が飛び交いました。

  イヴから       旅 人(一席)
  受け継がれた
  いのちの河
  絶えることなく
  女たちは受け継いでいく

 女たちが受け継いでいくものの総称として「いのちの河」と表現したことが、今更ながら新鮮。天地創造を思うような壮大な歌である。四、五行目の主語の捻れが気になるという意見も出たが、好評多数。世界中の女性は、ミトコンドリア・イヴと呼ばれるある一人の女性のミトコンドリアDNA(遺伝子情報)を受け継いでいるという説がある。核DNAと違い、ミトコンドリアDNAの特徴は母系遺伝をすること。NHKの番組で、母親から微かな細胞が胎児に伝わることを知り、驚いて詠んだ女性賛歌です、と作者。

  どのように      コバライチ*キコ(二席)
  微笑んだろうか 君
  夏が来て
  朴の木の花
  見上げる頃に

 一、二行目の展開が効いている。「君」とは誰か? 作者との関係は? そしてどれくらいの時間が経ったのか。ロマンティックな想像をかき立てる歌。男女の淡い想いを描いたシュトルムの『みずうみ』を思い出したという評も。朴の木は泰山木に似た大きな白い花を付ける。季節が廻り、一緒に見た花を見かけると、ついつい君を思い出してしまう。

  自然法爾*を   *じねんほうに  髙馬和子(三席)
  杖言葉に
  迷わず
  ゆっくり
  歩いて行こう

 あるがままの生き方、悟りを開いたようだ、肩の力が抜けている、心に沁みる等、多くの評者が作者の心持ちに共鳴した。「杖言葉」という言葉は五木寛之の本より。縁に従い、定められた運命のままに流れるように生きていこうと思う、と作者は静かに語った。



[37] 『五行歌』八月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 8月 1日(日)16時36分30秒 p5535120-ipngn11302marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:沙 羅

 六月七日(月)
 紫陽花が美しい季節になりました。歌の構成や一字の違いまで話しあえ、とても充実した歌会でした。二席も三席も二名でした。

  両脇を         沙 羅(一席)
  紫陽花で
  埋めつくし
  夢幻に誘う
  養源寺の道

 池上の知られざる紫陽花の名所、養源寺の光景を表現した歌です。地元のお寺ですので、皆さんご存じで、その光景にぴったりだと点が集まりました。作者は両脇という言葉が浮かんで得心したそうです。

  ダージリンに       旅 人(二席)
  摘みたてのローズマリー
  沸騰寸前の湯を
  ポットに注ぐ
  変わらない…日常

 落ち着かないこのコロナの時期にこそ、心のゆとりが欲しいです。作者は、紅茶にローズマリーを加えると、こくがでて美味しい! と言い、変わらない日常の大切さを詠みました。

  芽を出し        玉井チヨ子(二席)
  子孫を残す
  八つ頭
  朽ちていく
  最後の力で

 日常生活の中での観察眼が鋭いです。作者は、台所で忘れていた八つ頭が、芽を出す。子孫を残す。植物の生命力と自分自身の老いを考えたとのことです。

 三席は歌のみ紹介します。同点で二名でした。

  黄昏時         大箭佐代子(三席)
  銀座の交差点
  西の空の夕焼けを見る
  何故か切なかった
  青春のあの頃

  衣替え         武藤義子(三席)
  ズボンの丈
  また 伸びた
  縮んだ私
  姿見の中



[36] 『五行歌』七月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 7月18日(日)10時51分23秒 p8783149-ipngn21002marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅 人

 五月十日(月)
 歌会の会場、池上会館が緊急事態宣言で使用不可となり、急遽、紙上歌会鑑賞会にしました。自作品と自作品のコメントを纏めて十三名の手元に送りました。
 しかし、コロナ禍でも、何とかリアル歌会に近づけないかと考え続けました。幸い、皆さんがスマホをお持ちでWi-Fiの環境も整っていることが分かりましたので、「池上ライン歌会」のホームを作ることにしました。
 十日の夜、七時から九時まで、ライン歌会を開くことができました。多少の手違いはありましたが、ライン初心者も含めて無事に終えることができました。会場が使用不可でも、歌会を開くことができると知ったのは大きな収穫でした。

 皆さんの作品を紹介します。

  テレワーク様式は/仕事の無駄な所を/削ぎ落してしまった/本当に人間関係に/無駄は不要なのか
                                       雅蘭洞

  私は何処から来て/何処へ行くのか?/いのちの/砂時計が/減ってゆく    沙 羅

  季節に/無関心でいないと/価値を創れない/四角い画面/ばかり見ている   大島健志

  これから咲く/ツボミは摘まぬよう/パンジーの花がらを/老いた花を/摘む  紫かたばみ

  汝/火の子/水の子/浄*の女*/自ら浄まるものであれ  *きよめ *むすめ  一歳

  光が射し込む/林の中/小さな野の花に/蝶々が/そっとキスをする      玉井チヨ子

  家来が/居なくなったのに/王様は/まだ/気付いていない          旅 人

  夏日のファミレス/離婚届に/早くサインをと!/友人の亭主を/追いつめている  観 月

  旧友の便り/途絶えし悲しみと/新友とゆう/新しき友を得た/喜びが交差する  大箭佐代子

  探していた/言葉 見つかった/絡まった糸が/解*けた/一瞬に似て  *ほど  武藤義子

  お雛様と愛でた/ミニガーベラ/お礼肥で緑葉繁り/花芽が五本/嬉しい五月の花春  守野純子

  墓参り/砂利道に躓く/支えた/見えぬ手/誰                  髙馬和子

  昨日の今頃いらしてちょうだい/だなんて/室生さんたら。/後戻りしたところで/
  会いたかった私がきっと いる                         コバライチ*キコ



[35] 『五行歌』六月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 7月18日(日)10時13分2秒 p8783149-ipngn21002marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:武藤義子

 四月五日(月)
 桜の花も散り、葉桜へと変り始めました。今回もフェイスシールドとマウスシールドを使い、出席者八名で歌会を開くことが出来ました。自由詠一首、題詠「さくら」一首です。

 自由詠

  少年はあの日     大箭佐代子(一席)
  海で母を亡くす
  その海で漁師に
  そして父になる
  響け希望を未来へ

 出だし一行目がインパクトがある。漁師になった心がよく出ている。作者は東北震災から十年、悲しみの海でたくましく生きていこうとする青年の姿をテレビで観て、この歌を詠んだと語りました。

  天に          髙馬和子(二席)
  向かって
  萌え立つ
  欅
  春爛漫

 短く簡潔にリズムになっている。萌え立つ様に春の息吹が出て良い。作者はコロナムードを払拭し、春の喜びを欅に託して詠んだと語りました。

  夜桜に人影なく      武藤義子(三席)
  桜の精に
  心震え
  思わず手を合わせた
  一本のしだれ桜

 「手を合わせた」に、作者のしだれ桜に対する思いがよくわかる。作者は二十数年前、京都の円山公園のしだれ桜に心引かれた。

 題詠「さくら」棒書きで三席まで紹介します。

  宵闇に/朧に浮かぶ桜/引き込まれ/いつしか私は/西行の歌の中に    武藤義子(一席)

  パッと咲いて/パッと散る/潔さ/哀しさ/戦時下の櫻          大箭佐代子(二席)

  花びらが/ころころ と/坂をころがり/またひとつ/年を重ねて下る坂  玉井チヨ子(三席)



[34] 『五行歌』五月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 7月18日(日)04時02分56秒 p8783149-ipngn21002marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:紫かたばみ

 三月一日(月)
 梅の花や沈丁花の香る道をたどり池上本門寺隣の会館で、九名が集いました。

  蕗みそを      玉井チヨ子(一席)
  作る楽しさ
  食べる嬉しさ
  季節は巡り
  春がきた

 季節感とリズム感のある歌。蕗みそには春が来たと感じる喜びがあります。

  十年過ぎて     旅 人(二席)
  尚
  余震が続く
  傷む心は
  なお

 尚となおの使い分けが上手い。寄り添う心があります。作者は二月十三日の地震が東日本大震災の余震と知り驚愕しました。被災者の方々の辛さ思うと胸が塞がります。

  幾つもの      武藤義子(三席)
  豆雛
  そっと 取り出す
  しっとりと
  心華やぐ

 豆雛は、段飾りのような華やかさはないが、それぞれに思い深くしっとりと華やかです。

  赤い指さき      大箭佐代子(三席)
  老い衰えに
  逆らいて
  お洒落は
  私自身の印し

 お洒落は自分の為、身だしなみは他人の為と赤いネイルで女を楽しむ作者です。

 題詠「道」の一から三席です。

  角を曲がると/風が変わる/光が変わる/私も きっと/変わる    旅 人(一席)

  自由への/道づれは/孤独/荷物は/最小限             沙 羅(二席)

  文箱から 沈香*を/母を偲んで/焚いて 聞く/静寂のひととき/香の道  *じんこう
                                   髙馬和子(三席)  



[33] 『五行歌』四月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 7月18日(日)03時25分38秒 p8783149-ipngn21002marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:守野純子

 二月一日(月)
 紅梅咲き始め、コロナ自粛時の中、お元気な皆様七名の出席で雅蘭洞さんの司会で開始。歌会終了後、欠席歌三名の作品を朗読。

 自由詠

  涙は       沙 羅(一席)
  胸の
  奥に
  音もなく
  落ちる

 短い言葉に何とも言えず形が美しい。悲しさ余韻がある歌。良寛さんの書で、君看双眼色 不語似無憂を思い出すと。
 作者は、若松英輔さんが「本当に哀しいとき、涙は頬を伝わらない」と言われた言葉に感銘と共感を得て生まれたと言っていました。

  快晴の冬空が     武藤義子(二席)
  悩み不安を
  吸い取って
  一時* 私は    *いっとき
  真っ新らになる

 冬のきれいなそらに吸いこまれて行く気がする。生き直す気がする。決め手は、真っ新らと一時。
 作者は、高く澄んだ大空を見ていると、空の持っている無限の魅力を感じないでは居られないので詠んだと語っていました。

  思いと言葉が     旅 人(三席)
  重なりあう
  音を探す。
  時間は
  ある

 「音を探す。」丸が生きている。職人の様なとっても深い歌にかける時間がある。
 作者は、思いと言葉とリズムが重なりあう歌を模索しつづける日々を詠みましたと。

 後半は、題詠「夢」を鑑賞。

  彼岸から/笑いながら/手を振り 弟は/「楽しそうで良かった」/ぽっかり 白い雲
                                 旅 人(一席)

  ふと/生まれる前の/魂に戻る/人生は/邯鄲の夢        沙 羅(二席)

  私は/何かを/なくした/それは/夢か             雅蘭洞(三席)

 邯鄲の夢の意味を雅蘭洞さんがお話され、とても意義深い歌会でした。



[32] 『五行歌』三月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 7月17日(土)22時09分2秒 p8783149-ipngn21002marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅 人

 一月十一日(月)
 午後から霙の予報の寒い日でした。新しいフェイスシールドとマウスシールドを使用し手の消毒もしてから、出席者七名で歌会を始めました。幸い、会場に近い方が多いので通常歌会を開くことができましたが、遠方の方は欠席歌となってしまいました。コロナの早い収束を願ってやみません。自由詠一首、題詠「コロナ」一首で歌会を始めました。
 自由詠

  崩れそうな骨を    旅 人(一席)
  そうっと掴む
  命を使い切った
  百一歳の
  素晴らしき最期の姿

 「素晴らしき最期の、命を使い切った、そうっと」の表現に、亡くなった人への愛情を感じたと高得点でした。百一歳で亡くなった義父の骨の脆さに驚いて、見事だなと思い詠みました。

  キャンバスから    沙 羅(二席)
  明度と彩度が消えた
  あなたが逝ってから
  人生の色は
  無彩色

 あなたは何を指しているのか? 夫、子供、青春等々盛り上がりました。作者は大切な文学仲間を喪った心象風景を詠んだと語っていました。

 紙面の都合で三席は作品を縦書きで紹介します。

  すがすがしく/身も引き締まる元旦/遠い日のこと/去年* 今年/感慨は年毎に薄らぐ  *こぞ
                                  武藤義子

  盧生は夢に見た/栄枯盛衰の一生/夢には非ずして/現実ではないか/夢と思っただけ
                                  雅蘭洞

 題詠「コロナ」。縦書きで三席までご紹介します。

  正月に/廊下を走る/防御服/後ろ姿に/後光さす     髙馬和子(一席)

  みんなで/食事をすると/おいしいね…と孫/普通のことが/幸せだと気づく  玉井チヨ子(二席)

  コロナなる/魑魅魍魎が/跋扈して/試されている/人間の尊厳    沙 羅(二席)

  うちつづく/しゃばのコロナに/年も過ぎ/のべに花咲く/春になりけり   雅蘭洞(三席)


  



[31] 『五行歌』二月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 7月17日(土)15時26分7秒 p8776221-ipngn21002marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅 人

 十二月七日(月)
 本門寺の桜も葉をすっかり落とし、冬の青空にスッキリと、どっしりと裸木をさらしていました。新しい出席者が加わり九名で歌会を開きましたが、同点一席は武藤義子さんでした。今月から、出席できない方の欠席歌も受け付けることにしました。

  記憶の襞に     雅蘭洞(一席)
  埋もれた
  青春の残滓
  その輝き
  今も煌めく

 言葉の使い方がすばらしい、残滓と言い切って、次へ続く流れが見事、記憶の襞に惹かれたなど好評でした。作者は、欠礼葉書で学生時代の友の死を知った。若く輝いていた時を思い出して詠んだと語っていました。

  今更ながら…     武藤義子(一席)
  八十路を過ぎ
  友の急死重なりて
  生きることを
  いとおしむ

 コロナ禍で、生きていくことを再認識したわが身のことを詠んでいるような気持ち、「いとおしむ」に共感したなどの評がありました。作者は、入浴中に亡くなる友が続いて、暮らし方を考えてみたそうです。

  失いし        大箭佐代子(二席)
  愛しきもの
  子等が育ちし棲家
  戦友だったあなた
  左の乳房

 作者の気持ちが作品に溢れている、同性として共感した。「棲家」が良かったの評がありました。初めての五行歌で二席は見事でした、作者は、家も夫も乳房も失ったけれど、悲観的に思ってはいない半生を詠んだと語っていました。

 三席は紙面の都合で、縦書きで紹介します。

  錦の絨毯/サクサク/気分は深山の/紅葉狩り/るんるんサクサク
                                春 蘭(三席)

 歌会の後、本誌から各自が三首選をして鑑賞しあいました。
  



[30] 『五行歌』一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 7月17日(土)14時47分37秒 p8776221-ipngn21002marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:大島健志

 十一月三日(火)
 通常は第一月曜日開催だが、祝日開催ということで、初参加のいわさきくらげさん、羽田怜花さんを含め、十五名の方が集まり、賑やかな会となった。高評のお歌を紹介する。

  いつか       宮川 蓮(一席)
  誰かの真心
  こんなにも時を経て
  届くことがある
  打たれることがある

 「こんなにも」が切ない。胸にずしんときた、昔言われていたことが時を経て腑に落ちることはあるので共感した、といった評。作者は、「思い出の品を整理していた時に教師時代にもらった寄せ書きの中の言葉を見て感じたことを書いた歌です」とのコメント。

  長い長い雨が      田川宏朗(二席)
  止んだら
  街にくりだそう
  握手交わし
  声あげて

 コロナ禍が終わったらこの歌みたいにしたい、握手を交わすより抱き合いたい、コロナ禍が落ち着いても実現できない可能性もある、といった評。作者は、「雨はコロナの比喩です。これを願っているが、たしかに実現できない可能性もある」とのコメント。

  みんな ぬくもりを    大島健志(二席)
  傍においておきたい
  かわいくて
  扱いやすい
  ぬくもりを

 「ぬくもり」に惹かれた、とてもドキッとした歌、全体的に皮肉を感じる、といった評。作者は、筆者です。小さい子どもやペットを蝶よ花よと可愛がる人は多いが、そうした風潮に疑問を持って書いた歌。

  正月の駅伝は     羽田怜花(三席)
  どっちの大学を
  応援しようと
  テレビの前で楽しげに迷う
  オトンの姿はもうない

 五行目の「オトン」が響く、淋しい気持ちもあるがどこかユーモラス、懐かしさと悲しさが同居している、といった評。作者は、「父が今年亡くなった。私の大学が学部と大学院で違い、どちらも箱根駅伝の常連大学だったので、その思い出を書いた」とのコメント。

 歌会後は、十一月号の田川さんの特集『チャレンジド ウィズ コロナ』についての感想を述べ合う時間も設けました。



[29] 『五行歌』十二月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 7月17日(土)14時16分56秒 p8776221-ipngn21002marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅 人

 十月五日(月)
 フェイスシールドを付けるのも手馴れてきたコロナ禍の歌会が始まりました。先月、見学にいらっしゃった方が、見事、三席に入りました。紙上歌会に初参加されていた方もリアル歌会の緊張感を楽しんでいたようです。休憩タイムで飲む喫茶店「豆豆」の珈琲が懐かしい。

  胸底に        旅 人(一席)
  共鳴する
  微かな
  音
  出会いの始まり

 皆さんから点が入りました。言葉にしにくい思いを「音」と捉えたのが良い、「音」一文字の力が光っている、シャンソンの「パダンパダン」と共通するものがある等の評。作者は、素晴らしい人との出会いがあって、それを歌にしたいと願い歌が生まれました。心のアンテナを磨き続けることが出会いに気づくのではないかと語っていました。

  嵯峨野の       雅蘭洞(二席)
  庵に翁あり
  黙々として
  面をつくる
  秋や深し

 まるで古典の世界、これぞ五行歌、竹林の風を感じる、『修禅寺物語』のようの評がありました。作者は、六十年前、嵯峨野で出会った和紙で作る面作りの翁を詠んだと語っていましたが、面が仕上がる前に亡くなってしまったそうです。翁の素晴らしい巻紙の手紙を持参されました。

 紙面の都合で、三席の二名は棒書きで紹介します。

  ワイングラスを傾けながら/葡萄がワインになるまでの/芳醇なる時を思ふ/わが思ひも形になるまで/
  静かなる葡萄でありたや                        沙 羅(三席)

 「寝かせておくと良い歌になる」先月、出席された岡田道程さんの言葉に共感した作者は、急ぎ過ぎる自分への願望を詠んだと語っていました。

  思いは/あるはず(と思いたい)/それを表わすのが/コトバ/ではない夫*   *ひと
                                     紫かたばみ(三席)

 作者は、( )で心の叫びを表わし、片仮名でコトバを強調したかったと語っていました。



[28] 『五行歌』十一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2021年 7月17日(土)13時38分24秒 p8776221-ipngn21002marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:紫かたばみ

 九月七日(月)
 台風十号の影響で、時おり激しい雨の降る中、めげずに八名の会員と見学の大箭佐代子さん、萩原康子さんの十名が集いました。

  一糸まとわず    玉井チヨ子(一席)
  モデルとなり
  無言館で
  今も待っている
  愛する人を

 一糸まとわずの出だしで出征した人への一途な思いが伝わります。愛する人を待ち続ける恥じらいと決意の表情の乙女の絵。作者は数年前、無言館で絵を見てあまりに強烈で歌にできなかったが八月のテレビ番組見てやっと歌になりましたと。
 二席の歌が、なんと五名。三席と共に歌の紹介のみで失礼します。

  ベニスの水路に/午後の日差しが/照り映えるころ/古びた壁に響く/狂人のテノール
                                  雅蘭洞(二席)

  水があって土があって/木があって風が吹いて/てふてふが たかくたかく/梢の先まで舞い上がり/
  音もなく秋が降りてきた                     旅 人(二席)

  地には/累々たる言葉の骸*/バベルの塔のごとく/今にも/天の怒りを買いそう   *むくろ
                                  岡田道程(二席)

  盗み見る/あなたの横顔/マスク外して/お茶を飲む/赤い唇に ドキッ
                                  紫かたばみ(二席)

  異国語が飛び交った/外国子女の通学路/緑陰の坂道/今 蝉時雨の元に/猫眠る
                                  髙馬和子(二席)

  自国への路/コロナで閉ざされて/「流人になった気持ち」と/ラインで/娘はつぶやいた
                                  武藤義子(三席)

 後半は、岡田道程さんの『星月夜』の鑑賞会を行いました。各自二首選びコメントし、それに作者が作った時の思いを丁寧に解説し、また作った歌を半年は寝かせて醗酵させてからもう一度推敲します等の、歌作りの秘訣まで、惜しみなく披露してくださいました。十名ではもったいない話でしたが、十名だから濃密な鑑賞会でした。



[26] 『五行歌』十月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2020年10月 3日(土)11時45分3秒 p8542216-ipngn42801marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 八月紙上歌会
 八月こそ通常歌会を! と広い会場を予約して歌も纏めて八月三日(月)の歌会を待つばかりとなった。忘れもしない八月一日。「二日続けて東京の感染者数は四百人を越えました」とニュースが流れた。「出席します」の明るい声に救われたが迷い続けた。そして、紙上歌会に変更をした。新型コロナは夏の暑さと湿度に弱いと巷の噂があったが、猛暑でも収まる気配はない。
 今回はコロナ禍の歌会のあり方を考える良いきっかけになった。十月からは、少人数を生かして広い会場でフェイスシールドを配布して通常歌会を開くことにしました。
 紙上歌会はコメントを書く楽しみ、じっくり読む楽しみもあるけれど、やはり言葉の応酬のあるリアル歌会に勝るものはないと思う。

  胸底の小部屋に   平井千尋(一席)
  ピースの
  欠けた
  絵を飾って
  生きている

 一片の欠片は、全てのピースに拮抗する力がある、胸の奥の絵には何が飾られているのか等々。作者は失ったピースはもう戻らないと涙するときがあると語っていました。

  思い人が待つ    玉井チヨ子(一席)
  都へと
  古人*も歩いたか   *いにしえびと
  夕暮れの
  きぬかけの路

 格調ある抒情的な作品、「古人・きぬかけ」に惹かれた等々。作者は一人旅で日暮れの心細さを古人に重ねたそうです。

  誰を生かすのか    コバライチ*キコ(二席)
  決めるのは神か
  医者なのか
  わたし 生きられそう
  なんて 思う夕暮れ

 パンデミックにこそ問われる命の選択、作者の生への力を感じた等々。正常性バイアスの高い作者は、コロナ禍の中、命の選択は誰が? でも生きられそうと。

  ゆっくりとまばたきしたら   紫かたばみ(二席)
  消えていそう
  セミの声だけする
  真昼の公園で
  一人遊ぶ子

 真夏、真昼の公園、異界の扉が開いたかのよう、キリコの絵の様なシュールな映像等々。作者は、真夏の静かすぎる公園で、黙々と一人遊ぶ孫といたら異空間の感覚になったそうです。
  



[25] 『五行歌』九月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2020年10月 3日(土)11時12分58秒 p8542216-ipngn42801marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:守野純子

 七月六日(月)
 三ヶ月ぶりの歌会、紫かたばみさんの司会で開始されました。コロナ自粛生活の近況から、三密と外出をさけて、家でコロナ太りされた方が多かったです。

  心って      髙馬和子(一席)
  なに
  そうだ
  喜怒哀楽の
  収納袋

 心ってなに? 永遠のなぞ、脳にあるのか? 心と意志、精神的に良い分析、収納袋の表現が自由自在で納得する。

  梅雨空に     旅 人(一席)
  水玉 ストライプ 江戸小紋
  人混みを縫うように
  カラフルマスクが
  街を行く

 シェルブールの雨傘を思い出した。今コロナの現状をサッと美しく切り取って歌にされている。江戸小紋が入って落ち着いた。

  もの思うことに    紫かたばみ(二席)
  ストッパーかけて
  生きてきた
  わたしの歌の
  まぁ 平凡

 いろんな思いをつきつめて生きると、生きにくいのでストーッパーをかけている。
 良い人生が行間に全部入っている。平凡でなく、非凡な良いお歌がいっぱいある。

  ミュッセやショパンには   雅蘭洞(三席)
  聖女と讃えられ
  ボードレールには
  淫売と罵しられ
  評価の別れ道とは

 人名を出すことで、具体的にイメージできる。自分の思いをキッチリ言わないで、読手のイメージにおまかせする。別れ道の表現が良い。人間の評価はいろいろである。
 月刊誌六月号から好きな歌各自三首等を皆で鑑賞した。
 



[24] 『五行歌』八月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2020年 8月 3日(月)05時06分59秒 p2536030-ipngn21801marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 六月一日(月)紙上歌会
 中国では青空が見えて、ベネチアの水が澄んできたとニュースが伝えていました。
 コロナ禍で籠る暮らしになってしまいましたが、大作を読む機会と捉えると気持ちが楽になります。紙上歌会も三回目、皆さんのコメント力も増して読み応えのある歌会となりました。参加作品は十六首。コメント数の多い作品を紹介します。

  「自分を貫け」     観 月(一席)
  の言葉を胸に
  私は
  私の
  薔薇を描*く   *えが

 「薔薇」が良い、刺も太くなるのでは、強い思いが伝わってくる、自分だけにしか描けない薔薇は人生そのもの等々好評でした。作者は、岡本太郎氏の言葉を拝借し、他者に左右されない思いを大事にしたいと。

  流れは        明槻陽子(二席)
  緩やかに大胆に
  変わってゆくのだ。
  連続していると
  見えづらいが

 水の流れを普遍的な真実にとらえている、川のようでも政治情勢のようでもあり比喩となって重層性がある、俯瞰的な眼差し等のコメントが多数。作者は、歴史を振り返った時、分岐点はあそこだったと気づく、淡々と毎日は過ぎているのですがと記していました。

  なぜ、あなたに旅ができ      平井千尋(二席)
  私が物乞いをしなければならないのか
  昔、アフリカで出会った
  少年の大きな瞳に
  問われ続けている

 世界の格差と現実を問われ続けている、答えられる自分になるために何ができるのか、自分の日常は不均衡の上にあって、奪う側にいると実感するなどの評でした。作者は「後進国」と呼ばれる国の少年の真っすぐな瞳が忘れることができないとコメントしていました。

 紙面の都合で三席は歌のみ紹介します。

  今日/五十七歳になる/僕は/「新人類」/だった   憂 慧(三席)



[23] 『五行歌』七月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2020年 7月 2日(木)08時16分33秒 p5521222-ipngn11202marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 五月四日(月)紙上歌会
 街は緑で溢れているのに、マスクが日常となってしまい花の香を聞くこともできません。今月も紙上歌会となりました。参加者は十二名です。

  下心は        紫かたばみ(一席)
  闇に溶かし
  美しさだけ
  ライトアップして
  夜の薔薇の色香

 薔薇が咲き誇る季節にぴったりの歌、「下心は/闇に溶かし」の表現が見事で妖しい雰囲気を醸し出していると好評でした。作者は、大船フラワーセンターの夜のバラ展で見たバラが、昼と違った美しさだったので感激して詠んだと記していました。

  ひたすらな思いは    旅 人(二席)
  受け取らなくては
  いけません
  正か悪かは
  どうでもよいこと

 歌に同感、引き受けるのは人間の器量、ありきたりでない価値観に惹かれた、思いを受け取るなら危険も覚悟しなければいけない等々。作者は、人は思うように生きられない。せめて、思いだけは受け止めるようにしたいと歌にしました。

  コロナウイルスで    雅蘭洞(三席)
  株価暴落倒産失業
  ベニスの水は澄み
  北京に青空が戻り
  地球に清浄が蘇る

 コロナ禍の一面をつく歌、各行八字に収め二行目は漢字のみで技あり、人の動きが止まって戻る自然は皮肉。作者は、利己的資本主義経済学は終焉して利他的経済学の時代が来たと記していました。

  ひとのこころ    コバライチ*キコ(三席)
  花は知らずや
  突き上げる春の息吹
  そのままに 咲く
  咲く 咲く

 「知らずや」文語的表現が良い、咲くを三回重ねたのが印象に残る。作者は、花は愛でられている意識もなく、春が来れば花開く、その本能の不思議と記していました。



[22] 『五行歌』六月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2020年 7月 2日(木)05時14分58秒 p5521222-ipngn11202marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 四月六日(月)紙上歌会
 新型コロナウイルスによって会場が使用できなくなり、紙上作品展覧会に変更しました。歌の後に作者のコメントを載せました。

捨てても 捨てても/捨てきれない/身体という器/此処より彼方へ/憧れでようとする霊*  *アニマ
                                            一 歳
 作者コメント…私の霊*は時々彼方へ憧れでようとして漂いだしそうになります。

他人は人生の/点景人物に過ぎない/自分も又/他人の人生の/点景人物に過ぎない      雅蘭洞

 作者コメント…自己と他者の絶対的な枠のもどかしさを詠みました。

自主規制にて/閑中忙有と/断捨離を決断/アルバム整理で/早や頓挫する         髙馬和子

 作者コメント…自分は「思い付き人間・尻つぼみ人間」と思い知りました。

尾根走る/風よ/幾たびか/山を廻り/痩せてゆくか               コバライチ*キコ

 作者コメント…尾根を吹く風の行方を追ってみました。

桜隠しの/今日の日に/語ることなく/男*は/旅立つ  *ひと               旅 人

 作者コメント…桜に突然の雪が降った日に「東京を出ます」と言われた時の情景。

おたまじゃくし/鶯の声/二人で歩く六郷用水/それぞれが/原風景の中          玉井チヨ子

 作者コメント…夫婦で同じ風景を見ているが、幼き頃の思い出は別々。

私が桜*なら/梶井基次郎**に教えるわ/「生餌に勝る/養分は/ないのよ」って  *カノジョ **カレ
                                             観 月
 作者コメント…熟成肉よりレアが食べたい気分だったので。

神が/老人問題に悩む/人類に与えた恩寵か/新型コロナウイルス/《プラン75》を実行する
                                           紫かたばみ
 作者コメント…映画〈プラン75〉とコロナで先の見えない今の状況を重ねました。

朝の公園/桃の花に/メジロがいっぱい/蜜がおいしいよ と/可愛くさえずる        守野純子

 作者コメント…毎朝散歩する公園のメジロが可愛いので。

老いて/頬の垂れた/母/身長が/七センチ縮んだと                     憂 慧

 作者コメント…たまには親の歌も。



[21] 『五行歌』五月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2020年 5月 4日(月)09時29分24秒 p7682168-ipngn35401marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 三月二日(月)
 新生*コロナウイルスが世界中に広まり始めて、不穏な空気に休会する歌会も多くなりました。早い収束を願っています。
 肌寒い雨降りの中を、漂彦龍さん、憂慧さんをお迎えして七名で歌会が始まりました。司会は守野さんでした。
 (*注:「新生」は「新型」の誤入力でしょう、「新型」と読みかえてください。)

  人生で        憂 慧(一席)
  読み解くのは
  花火のシンメトリー
  ではなく
  ロールシャッハの花びら

「ではなく」に引き付けられた。「ロールシャッハ」の言葉に、皆さんの考えが分かれ盛り上がりました。作者は、読み解いていく例えに、花火の単純なシンメトリーと、ロールシャッハの無秩序で複雑な形を表現したと語っていました。

  牢屋の窄*の    *さこ  一 歳(二席)
  碑*に       *いしぶみ
  金文字で
  刻まれた
  隠れの島の記憶

 隠れキリシタンのことなのか、金文字は心象風景なのかと話し合いました。作者は五島列島の旅で、隠れキリシタンの金で書かれた石碑を見て思いを詠んだそうです。

  待ちわびて待ちわびて    秋山信子(二席)
  やっと来るバス
  今日はまた何故行き過ぎる
  いいもーん、
  これから私歩くと決めた

 一行目の繰り返しのリズムが心地よい、四行目の読点が効いていると好評でした。作者は待っている時は来ないバスを、待つのは止めた生き方に例えて詠んだと語っていました。

  高架下で       漂 彦龍(二席)
  ゴミ袋の中の
  縫いぐるみと
  眼が合う
  朝帰りの朝

 高架下は投げ捨てる場所の例えなのだろうか、哀愁と悲哀を感じたと言ってました。作者は捨てられた縫いぐるみと目が合った時の気持ちを詠んだそうです。

 三席は紙面の都合で歌のみ書きます。

  その/一言が/聞きたくて/ビデオを観る/「モランディは完璧だ」   旅 人(三席)



[20] 『五行歌』四月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2020年 4月 2日(木)19時07分59秒 p8449177-ipngn40301marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:雅蘭洞

 二月三日(月)
 暖冬の今年の冬も、立春の前の節分の今日は漸く冬らしい冷たい風が吹き、会の面々は厳冬の装いで池上サロンの定席である珈琲店の二階に集合した。
 此処はモンマルトルのカフェの屋根裏部屋の様な雰囲気があり、歌の会にはお誂え向きの場所である。初参加の秋山信子さんをお迎えして歌会が始った。司会は玉井チヨ子さん。

  寄り添ったのも本     旅 人(一席)
  再生したのも本
  右手の紙の手触りが
  生きよ
  と言い続けた

 本と人との強い絆を詠み込んだ歌で、作者の強い想いが伝わって来る。本が作者の生きる糧に成って居る。作者の並々ならぬ本に対する愛情が感じられる等の評があった。
 作者は母上を看病して居る時に、本との絆を強く意識した由。話したくても友人はそこには居ない。本は身近で励まして呉れるとの事。

  世界の        紫かたばみ(二席)
  蝶番がはずれた
  不寛容と憎しみの
  幼虫がうごめき
  変態をはじめる

 蝶番が外れると云う表現が素晴らしい。日本は紛争が無いだけ未だましだが、世界中至る所にに憎しみと争いが溢れて居る等の評があった。
 作者は最近の世界情勢の自分勝手な民族主義と自己主張を憂えて此の歌を詠まれた。

  見えない「点」     雅蘭洞(三席)
  拡がって「空間」
  感じない「今」
  連なって「時間」
  其がこの「宇宙」

 点から宇宙への壮大な展開が面白い。特別な事を云って居る訳では無い。点とは何? 今とは何? と云う事を云って居るだけだが、構成が上手い。一番上の字を漢字で揃えて居る。詠み方が新鮮、等の寸評があった。
 作者は我々は三次元の存在なので三次元の事物しか感知出来ないが、其を構成して居る零次元に不思議を感じたとの事であった。

 歌会の後で、本誌一月号巻頭歌から、三首を選んで寸評し合った。



[19] 『五行歌』三月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2020年 3月 2日(月)22時17分45秒 p7139076-ipngn32701marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:一歳

 一月六日(月)
 年初の池上サロン、司会は紫かたばみさん。

  流れ星は 天界の落ちこぼれ
  我は 地上の落ちこぼれ
  悩み悩んだ青い時
  今は ただ懐かしい
  グレー時        髙馬和子(一席)

 天界の落ちこぼれ、地上の落ちこぼれと並べて「我」を「流れ星」に重ね、己が生を宇宙的視座で振り返ってみれば、地上の生はほんの一瞬、須臾の間に過ぎ去ってゆく。人生のグレー時となった今は、悩みに悩んだあの青かった時がただ懐かしく思われる。作者は中学生の時に既に「流れ星は天界の落伍者」と詠まれていたというが、今は「グレー時」という時の色を発見した。

  幼子よ お前に      旅 人(二席)
  零れるばかりの愛をあげよう
  先逝く者は
  見届けることが
  できないのだから

 先に逝く私はこれから先お前が歩むであろう道を見届けることはできない。だからこそ、幼子よ、今、いのちの塊のようなお前に、今私がもっているものすべてをあげたい、とりわけ愛を、お前の溢れるばかりのいのちに染まった私から雨霰と零れるばかりの愛を、今のうちにできるかぎり、お前にそそぎたいのだ。お孫さんに愛をそそごうとする気持ちは祈りのようである。

  今までは       雅蘭洞(三席)
  無常迅速
  これからは
  日日是好日
  ゆっくり行こう

 お正月が来るといつも感じること??この一年あっと言う間に過ぎ去ってしまった。ついこの間生まれてきたばかりなのに。死ぬ時も多分、ついこの間生まれてきたのになぁと思って死んでいくのだろうか。「生死事大 光陰可惜 無常迅速 時不待人」時は人を待ってくれない、光陰惜しむべし。『碧巌録』第六則で知られる「日日是好日」を「無常迅速」と番わせて、今までとこれからの生き方の導を禅語で簡潔に表現し了せた、見事な作。

 休憩をはさんで、旅人さんの歌集『真珠層』より三首選で鑑賞、短評を交換した。



[18] 『五行歌』二月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2020年 2月 1日(土)21時28分49秒 p12230-ipngn8001marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 十二月二日(月)
 豪雨の中、足元を濡らしながら珈琲の香りに満ちた「豆豆」に八名が集まりました。令和元年*最後の歌会、一時からサンドイッチランチで始まりました。司会は雅蘭洞さん。(*元年を補足)

  決壊なくとも      紫かたばみ(一席)
  洪水となる
  出口を塞がれた
  思いは逆流し
  今、マンホールの蓋吹き上げる

 豪雨が多い最近は、マンホールから水が吹き上がる光景を見るようになった。その様子を心の思いと重ねて巧みに詠んだ見事な作品でした。作者は、台風の映像でマンホールの蓋が持ち上がり水が噴き出す様子を見て、例え決定的なことがなくても、思いが重なっていけば同じようになると思い詠んだと語っていました。

  年の瀬の慌ただしさ     雅蘭洞(二席)
  正月ののどけさも
  今は昔
  情緒の文化が消え行き
  効率の文明が蔓延る

 今は毎日がハレとなってしまっている。この歌をきっかけに、伝統としての文化と、科学の発明で便利になった文明の対比について皆で話し合った。作者は、家族が揃って正月を迎えて羽根つき凧揚げを楽しんだのが、効率が優先となってしまった今の世を詠んだと語っていました。

  心を鎮めたいときは     旅 人(二席)
  カッチーニのアヴェ・マリア
  部屋中に響かせて
  Repeat
  奥底の思いを聴き続ける

 Repeatが効果的で丁寧に心情が綴られて音楽が全身に響いてきた。作者は、アヴェ・マリアのCDを友人から贈られ、その中でも、カッチーニに魅せられ、ほっとしたい時は浴びるように聴いているとのことです。

  鷹の井が/浄らの水淼淼と/湛えることあらば/戀う/その源の水
                         一 歳(三席)

  AIさん/あなたは緻密で完璧/でも/人々の琴線に触れる/五行歌を詠めますか
                               髙馬和子(三席)

 珈琲を飲みながら本誌十一月号から三首を選んで話し合いましたが、髙橋美代子さんの作品が好評でした。



[17] 『五行歌』一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年12月30日(月)17時38分7秒 p2341100-ipngn17901marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:守野純子

 十一月四日(月)
 さわやかな秋日和り、お客様に田川宏朗さんと、元気になられた一歳さんが久しぶりに出席されての歌会です。
 司会は一歳さんです。

  老いの日常は         紫かたばみ(一席)
  鈍行列車なのに
  終着駅が近づくにつれ
  超特急並みに
  風景が過ぎ去ってゆく不思議

 老いの日常は五才は1/5、八十六才は1/86と、年とるほど心理的に短かい。老いの感情を鈍行と超特急の比喩が納得させてくれる歌。不思議と中性的な結びがきいている。

 二席が四首となり、/で段落します。

  式場を和ませる/クラリネットの調べ/亡母さんが/好きだった/モーツァルトだよ
                                田川宏朗(二席)

 母を思っている気持が胸にグッと来る。
 モーツァルトがピッタリはまっている。私だったら、何の曲だろうと考えてしまった。

  近い未来/人工頭脳が/自意識を持った時/魂・生死・実存の/概念が大きく変わる
                                 雅蘭洞(二席)

 人工頭脳が自意識を持ったら、魂・生死の概念が大きく変わると言い切りが素晴しい。人間て何だろう、人間の存在てなんだろう、変わるんだろうな、そうだなあと共感した。

  目覚めたあとも/妙に気になる/夢の中/忘れてきたのは/バックだけなのに
                            玉井チヨ子(二席)

 目覚めた後も気分が残る、共感でき身につまされた。夢の中には意識下の物の体験、バックの中に何が入っていたのかな。

  鰯が/鯖が/抜けるような空を/泳いでいる/下界の不漁を見下ろしながら
                             旅 人(二席)

 魚の不漁、今年の歌だなあ。空は境界線がないからいいんだよ。下界は大変ですね。上から下を見る五行目が良いと思う。

  幻身/釘打たるるとき/現身に聴く/槌音ー肉の顫え/Paternoster
                          一 歳(三席)



[16] 『五行歌』十二月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年12月 4日(水)21時23分22秒 p9016-ipngn9401marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:紫かたばみ

 十月七日(月)
 十月になり朝晩は涼しくなりましたが、昼間は夏の日差しです。でも街角にはコスモスが揺れ秋の気配。今日は池上会館で、守野さんが初司会です。

  知りたいことは      旅 人(一席)
  たった一つ
  何を思い
  何を大切に
  生きてきたのか

 重い、深い歌。直球で問いかけるのは、自分の内面のことと解釈した人と、好きな人の思いと解釈された人に分かれました。作者は再婚を考えていた時、反対されたり職業で選んだと言われたが、何を大切に思うのか? という価値観が一緒で話して面白い人なら、身分や年齢や外面は関係ありません! と。

  ひかれるのに       紫かたばみ(二席)
  ストンと
  腑に落ちない歌
  食べ過ぎた次の日の
  胃もたれに似て

 腑に落ちる歌。感覚として良くわかる。良い歌なのに、頭では良い歌と思っても何か違和感があったり、心にすっと入ってこない感覚が良く表現されている。飲み過ぎの苦しさではなく、食べ過ぎの何となく収まりの悪い感じがぴったり。

  入り日に映える風物は   雅蘭洞(三席)
  もの寂しいが美しい
  キリコの絵のような
  いつか見たような
  消え入る美しさ

 何と言ってもキリコの絵が効いています。シーンとした美しさ、初秋のさみしさや、なつかしさが伝わります。キリコの絵を知らない人でも、ことばの響きで雰囲気は伝わります。作者は西日の当たる風景の美しさを表すには、キリコの絵しかないと。漢詩を引用されてたりして反景(西日)の美しさを語られました。
 後半は五行歌誌九月号より、三首選んでじっくり話し合いました。今回は五人と、少人数でしたが、その分ゆったりとじっくりと話し合いができて良かったです。



[15] 『五行歌』十一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年11月 2日(土)18時24分3秒 p7324234-ipngn34301marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:玉井チヨ子

 九月二日(月)
 水と一緒に産直ぶどうの差し入れ、皮もむいてあり店主のはからいにほっと一息ついての歌会のスタートです。
 今月は出席者五名と少ない人数でしたが、それぞれの方のコメントが、とても有意義で楽しく時間も足りないくらいでした。
 司会は旅人さん。

  もうすぐ         玉井チヨ子(一席)
  始まる
  マンション建設
  青々とした
  夏草の終着点

 経済発展と共に自然を壊すマンション建設。昔はどこにでもあった野原もなくなった。一抹のさみしさと消えてゆく夏草の哀歌。

  光に影はない       雅蘭洞(二席)
  遮るものが
  影をつくる
  不幸を知って
  幸せを知る

 幸せと不幸を光と影と言葉の使い方がさりげなく心をつかむ。一行目の光に影はないになるほどと、前三行がとてもかっこいいのに、四、五行が平凡すぎるのではのコメントに「自分を幸せだと知らない人間は不幸」とドストエフスキーの言葉が元にあったと、物知りの作者に又ひとつ学びました。

  百舌鳥夕雲*町を   *もずせきうん  コバライチ*キコ(三席)
  夕陽が包む
  太古の昔
  大王*をも      *おおきみ
  照らした光だ

 一行目の地名からインパクトがありひき込まれる、世界遺産に決定した古墳群を夕陽が包む、現在も、太古の昔も、永遠と続いてきたとても神々しい風景が見える様です。
 作者の体験談を聞いてぜひ一度行ってみたいと思った筆者です。
  



[14] 『五行歌』十月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年10月 4日(金)04時02分39秒 p1775038-ipngn16101marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:紫かたばみ

 八月五日(月)
 容赦ない真夏の陽射しが、照りつけるなかたどり着いた涼しい喫茶店の二階で、初参加の中澤京華さんをお迎えして玉井チヨ子さんの司会で始まりました。

  生まれるまえと     雅蘭洞(一席)
  死んだあととは
  正真正銘の空
  浮世のくらしは
  ほんのひと休み

 哲学的で、宗教的な深い歌です。真ん中の「正真正銘の空」の迫力と、ほんのひと休みのとぼけた軽み。般若心経の「色即是空」の世界でしょうか? 作者は、最近のトピックを昔なじみに知らせようとしたら、皆亡くなっていて自分は長く生きすぎたかな。宇宙の時間からみたら人生せいぜい百年で、不在こそ実在で死ぬことも怖くないと、悟りの境地です。一休さんの名前の由来から銀座で飲んだ話まで話題の尽きない歌でした。

  母が          中澤京華(二席)
  ありがとうと言うと
  父が
  ありがとうと笑った
  夏の日

 さらりとシンプルに歌われて、つい読み過ごしがちだが、じわじわと万感が伝わる歌。夫婦円満であたたかい家庭が浮かび、ほっこりする歌。夏の日で切った終わり方がいい。
 作者は去年亡くなった父と、二人三脚で支えた母を歌いました。直接言い合った訳ではないけどよく「ありがとう」と言う父母でした。

  矛盾を         旅 人(三席)
  受け入れ
  呑み込む
  仲直りは
  なぜか 哀しい

 大人の仲直り。受け入れるのはできても呑み込むのは苦しい。作者はケンカが苦手でなんかな~と思いつつも呑み込みウワバミ状態に。それが私の何かを育てているのかな?

  会社で 日々      紫かたばみ(三席)
  規格化した男と
  家庭で もう母、妻の
  着ぐるみ脱ぎたい女が
  同居する 定年後

 面白いけど熟年離婚が心配など、それぞれの夫婦のあり方が話題に。作者は夫の愚痴をこぼしつつも、夫の協力で五行歌等好きな事ができる事に感謝と。
 コーヒータイムの後は、恒例の七月号からの三選をしました。



[13] 『五行歌』九月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年 9月 1日(日)09時24分23秒 p8010012-ipngn42301marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 七月一日(月)
 肌寒い雨模様の日でしたが、珈琲の香りを楽しみながら歌会が始まりました

  湿りを帯びた真夜      旅 人(一席)
  凌霄花*が         *ノウゼンカズラ
  触手を伸ばし
  おいで おいでと
  異界へ誘う

 怪談のような雰囲気で、昼と違う夜の花の不思議な感じが上手く表現されていると高得点でした。作者は筆者ですが、夜道の風に揺れる凌霄花が、手招きをしているように感じたので詠んでみました。

  雨の中          紫かたばみ(二席)
  バスを待つ
  ちっとも来ない…
  他に待つ人もないー
  ……-ーー土砂降りとなる

 一行から五行に向かい字数が増え、雨量と苛立つ気持ちが重なり、記号によく表されていて面白いと盛り上がりました。作者は、五行目に不安感を表したかったので記号を使ってみたとのことです。

  怠け者の美学        一 歳(二席)
  論う
  口もたぬ
  無口な
  職人*の技*     *アルチザン  *アルス

 凝縮した緊張感あふれる作品、多弁の世相への批判ではないかと感心しきりでした。作者は、近現代の芸術家は話しはするけれど、芸術性がないと痛感しているので、そのことを歌に詠んだそうです。

  人通りの少ない      雅蘭洞(三席)
  真昼のミラボー橋
  川面の漣が囁く
  古き良き時代の
  詩人と画家の恋物語

 まるで映画の一場面のようにシャンソンが聴こえてくる、堀口大学の訳詩を思い出したとの評がありました。作者は五十年前、ミラボー橋に住んでいた友を訪れた時を思い出して詠んだそうです。

 歌会の後、「池上サロン個人年間作品集」を手に、各自が選んだ歌を述べ合いました。    



[12] 『五行歌』八月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年 8月 2日(金)08時48分14秒 p4211-ipngn10001marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:雅蘭洞

 六月三日(月)
 梅雨を控えた貴重な快晴の午後、カフェの屋根裏部屋の會場に集った七名の會員により歌會が始まりました。
 司会は髙馬さんです。

  自己責任は        旅 人(一席)
  手を差し伸べない
  「免罪符」
  君が傍観者で
  いられるから

「自己責任」と云う言葉には、その責任の生ずる状況、條件によって必ずしも免罪符として傍観者になって突き放せない種類のものもあるのではないか。例えば国民に真実を伝える爲に、危険を冒して中東へ赴き、テロリストに捕った場合と、人の制止を振り切って入山し、遭難した場合の「自己責任」は明らかに違う。一概に免罪符を持った傍観者に逃げて良いとは限らない。

  雨はいつも      紫かたばみ(二席)
  予報より早く
  降り出して
  覚悟できていない
  心と体を濡らす

 脳は心の準備より早く感覚として雨の予感を知る。然て心と体は一体だから濡れるのは同時。感覚と知覚の齟齬を心理描写としてうまく表現されて居るのでは、と議論がありましたが、作者としてはいつも天気予報を気にして居り、経験上から詠まれたとの事。

  人生の滋味      雅蘭洞(二席)
  無用の用を
  楽しむ贅沢
  無役な装飾
  生きる意味

 漢字を多用して各行の字數を揃え、言葉を楽しみ、言葉で遊んで居る様な気がする。と云う意見が多かった。作者の意図した所は、最近あらゆる生活の場で無駄が省かれ、機能一辺倒になり、人生の面白味が消えつつある淋しさを詠んだとの事。

 三席二首は歌のみ紹介致します。

荷台に揺れる/花籠が聴くは/別れか喜びか/過ぎゆく車に/心残して   髙馬和子

手助けする/やさしさと/突き放す手厳しさ/娘も/母の自立を願う    玉井チヨ子



[11] 『五行歌』七月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年 7月 2日(火)13時27分17秒 p4182068-ipngn24301marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:玉井チヨ子

 五月六日(月)
 前半は、いつも通りに歌会、後半は、『だらしのないぬくもり』の歌集鑑賞会、作者の大島健志さんとお客様もお迎えして、各自が二首を選んで感想を話し合う。
 作者のコメントもあり又紫かたばみさんも、ご出席で親子関係の温かさも感じる、とても有意義な時間が過せました。
 司会は旅人さんです。

  好きなものより      井椎しづく(一席)
  嫌いなものの方が
  教えてくれる
  わたしの
  境界線*      *ボーダーライン

 全体が、とてもやさしい言葉で心に響く。
 たしかに楽しい時より、苦しい時の方が学ぶべきものがあったと皆様も共感され、五行目の境界線(ボーダーライン)もとても効いていると絶賛されました。
 嫌いなものは避けたいけれど、教えてくれるものがあったと作者。

  この怒りが        宮川 蓮(二席)
  凪いで消えても
  覚えていられますように
  ひとの気持ちを
  思えますように

 怒りが消えても、この感情を覚えておきたい気持、自分自身に問いかけているように又反省をそているように、人の気持をいつも慮る、平常心、祈りに近い。
 ひとの気持ちはわかることは出来ないが、思えますようにで作者の気持が込められている。

  ゆっくりしか      玉井チヨ子(三席)
  歩けない
  だからこそ味わう
  人生の最終章

 年を重ねてゆっくりしか歩けなくなる、だからこそ、開き直って人生を楽しんで生きていきたいと思う作者の願望です。
 そうだねと共感出来ると年令の近い方からの賛同を頂きました。



[10] 『五行歌』六月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年 6月 4日(火)09時21分37秒 p3353015-ipngn19501marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:一歳

 四月一日(月)

 命の           旅 人(一席)
 有限を
 告げられた時
 ゆっくりと
 二人分の紅茶を淹れる

 パートナーが余命を告げられた時と読まれた方が多かったが、作者は、書道の恩師が余命六か月と告知された時、私にできたのはゆっくりと紅茶を淹れることだけだったと。
 パートナーが告知されたとして、同じく共に過ごす時間をもつだろうとも。終末を見つめ死を受け入れるための時間。やがて来る死までの時をどう生きるかを考えさせられる作。

 朽ちる命 育つ命     紫かたばみ(二席)
 すべて呑み込み
 まったりと
 春の海は
 スパンコールの輝き

 寄せる波、引く波は、命の海に繰り返される生死の喩。命のすべてを包み込み呑み込んで海面はキラキラと輝いていた。この春の海に、生まれ出た新芽のような命に灌がれる慈愛に満ちた菩薩界を感じたという方、「スパンコール」に違和を感じたという方も。

 自分で         大橋克明(三席)
 創り出した
 時間軸で
 振り回される
 愚か者

 自分自身がつくりだしたもの・ことに振り回されるのは人の常。愚か者とは私自身のこと、とほぼ全員が読まれた。時間表ではなく時間軸。この軸とは、自身の生きる中心核でもあろう。自身が創り出したものに振り回されている愚か者の日常そのまんま、と作者。

 愉しみは       コバライチ・キコ(三席)
 醍醐寺の庭
 四角く切り取り
 春を満たす
 土牛*の桜      *とぎゅう

 秀吉が権勢を誇った頃の醍醐時の桜を彷彿とさせる一方、今ある庭の桜を見る視座から、その桜時空を「四角く切り取り」、「土牛の桜」と転じたのが秀逸。淡い色を重ねて画かれた土牛の桜花弁は一枚とて同じではない。櫻明りと櫻闇の境を湛えた幽玄の櫻の姿が顕つ。



[9] 『五行歌』五月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年 5月 2日(木)20時51分26秒 p7863151-ipngn36901marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 三月四日(月)
 昨夜から続く、あいにくの雨でしたが、ゲストの方を六名お迎えして十四名の熱い歌会が始まりました。司会は玉井さんです。

 雨を受けて       富士江(一席)
 竹林が
 伸びをする
 イッセイノセッ!と
 空を持ち上げる

「イッセイノセッ!」と竹林の掛け声が聞こえてくるような楽しい元気な歌と皆さんが絶賛でした。「空を持ち上げる」も成長の速い竹を力強く表現して見事です。京都旅行で立ち寄った天龍寺脇の小路の竹林が、春雨を受けて生き生きとしていたので歌に詠んでみたと作者は語っていました。京都へ行って良かったとも。

 死者たちで        一 歳(二席)
 溢れんばかり
 他界にぬける       (レポートの「抜ける」を訂正して印字)
 太虚*      *そら   (レポートのルビ「とき」を訂正して印字)
 真っ青

 死者たちの世界を、このように明るく表現する歌に驚きました。短い極限の表現で宗教観を越えた作品です。この歌をきっかけに死後の世界について語り合いました。作者は以前から、考えていた生の延長線上の死を詠んだと語っていました。

 時間は流れているのか?    雅蘭洞(三席)  (レポートの「二席」を訂正して印字)
 時間は去来するのか?
 時間は
 トポスの中から生まれ   註 トポスは場所、位相(レポートには註が入っていないので補足)
 そしてすぐに消滅する

 この歌も考えさせられる歌でした。時間を線として捉えるのか、トポス=居る場所として考えるのか、「今」は概念としてはあっても、すでに消え去っていく。喧々囂々で、さながら哲学カフェのようでした。作者は、時間についての考察を歌に詠んだそうです。

 歌会の後、喫茶店「豆豆」へ移動して挽きたての美味しい珈琲を飲みながら、歌談議に花を咲かせました。帰るころには雨も止み明日は晴れそうです。



[8] 『五行歌』四月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年 4月 5日(金)06時39分41秒 p4217241-ipngn24501marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:守野純子

 二月四日(月)
 紅梅が美しく咲いた池上で、豆豆を会場に九人の参加、玉井さんの司会で始まりました。

  孤独は          雅蘭洞(一席)
  影の様に寄り添い
  決して離れないが
  常に自由気儘に
  させて呉れる

 孤独は寂しいのではなく、自由気儘を与えてくれる。精神力の強い方だなあ。受動態の歌であり深い歌である。
 作者は、孤独を全面的に受け入れる、真の自由は、孤独の恐ろしさを感じる。孤に徹すると自由である。孤独を楽しむという考え。

  こんな          愛 子(二席)
  小さな面積で
  地球と私を
  繋いでくれていたんだ
  じっと足の裏を見る

 自分と地球、世界中と繫っているという発想が豊か。自分自身の中に小宇宙がある方だなあと思う。自分の足の裏を見るユーモアがある。
 作者は、皆さんが解って下さったとおりと。

  目を閉じ         旅 人(二席)
  耳を塞ぐ
  情報を遮断して
  熟成する時を
  待つ

 今の時代を表している。常識は常に変更している。自分自身で考えて熟成するのを待つ。社会のニュースに惑わされている自分も熟成されるのを待つ。
 作者は、情報あふれた時にゆらぐ気持がある。チョット待て、自分に問い直す、絵を見て落ち着く、とコメント。

  今日を 蹴り上げろ     都築直美(三席)
  明日を でっち上げろ
  生きたけりゃ
  常識なんかじゃ
  もう 駄目なんだよ

  時代が進むに従い      大橋克明(三席)
  人は
  ザラつく舌を無くし
  二枚舌を
  使うようになって行った

 同点三席は、二首とも、深奥の深い所へ、響くお歌でした。
 後半は、五行歌誌一月号から、各自三首選び感想を述べ合いました。



[7] 『五行歌』三月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年 3月 4日(月)23時10分11秒 p10099-ipngn10001marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 一月七日(月)
 青空に五重塔がくっきりと浮かぶ七日正月本門寺にお参りをしてから歌会へ向かう。
 段重ねのお弁当をいただきながら(玉井さんから漬物の差し入れあり)三月の池上サロン主催「柳瀬丈子氏・特集鑑賞会」のことを話し合った。ゲストに初参加の雅蘭洞さんをお迎えして九名の熱い歌会が始まりました。司会は紫かたばみさん。

  この身の悩みは      玉井チヨ子(一席)
  小さきもの
  巨岩を抱きかかえた
  樹齢二千年の
  大楠を見上げて

 人間の悩みと大楠との対比が良い、宇宙を感じる、楠のエネルギーを素直に詠んで共感できる等の評がありました。
 作者は、来宮神社で、大楠を見上げる背もたれに身を預けて見上げていた時、自分は小さいな~としみじみ思ったので歌にしましたと語っていました。

  あこがれの帆を上げ
  羨望のため息を
  吹きかけてみても
  作りたいと 作れる歌の
  距離は縮まらない      紫かたばみ(二席)

 「羨望のため息」は個性的で素晴らしい表現、歌を詠む者の思いがこもっている等の評がありました。
 作者は、前に作った歌を推敲し直して作った作品で、常に思っていることを詠んだと語っていました。

  風のかたち         コバライチ*キコ(三席)
  風の速度に乗ってゆけ
  連凧の
  いのちのかたち
  初空に見る

 正月らしい歌、青空に連なる凧が浮かぶ、「いのちのかたち」に命の連鎖を感じた等の評がありました。百八十メートルも上がる連凧の写メに盛り上がりました。
 作者は、三鷹中央公園の凧揚げ大会で、百三十もの凧が連なっていく様子が、まるで受け継がれる命のように思えたので詠んだと語っていました。

 歌会の後で、本誌十二月号巻頭歌から、三首を選んで寸評しあいました。



[6] 『五行歌』二月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年 2月 2日(土)20時48分28秒 p2602128-ipngn22001marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:紫かたばみ

 十二月三日(月)
 木枯らしが吹かぬまま、迎えた十二月の第一月曜日。ポインセチアやシクラメンの赤やピンクの花々であふれる花屋の前を通り、今日も”豆豆”にて、山鳥の郭公さんと山本富美子さんをゲストに迎えて始まりました。

  台風で苦しむのは      紫かたばみ(一席)
  人間だけじゃない
  赤や黄のドレスで
  旅立つ夢破れ
  茶枯れて強制落葉

 台風の塩害を色彩豊かに歌っている。人間だけじゃないと言い切った強さと、強制落葉という、造語のインパクトに惹かれた方が、多かったです。作者は同じテーマの歌を他の歌会に出し、初0点貰い、削ったり入れ替えたりリフォームした歌で高得点いただき感激ですと。元歌は十二月号一九二頁に掲載。

  奥に潜む        旅 人(二席)
  夜叉を
  飼いならして
  歳月が
  菩薩にかえていく

 夜叉や菩薩がよくわからない方、私は昔、夜叉でしたという方。仏教の十界論を論じる方や歳月が菩薩に変えるに心洗われた方、年と共にイライラ無くなり丸くなった方、私の論理に合わないとキッパリいう方等々、いろいろ意見が飛び交いました。作者は自分には夜叉がいて何とか浄化したいと、育たぬよう努力し続けて菩薩に変えつつあると。

  月の蒼い晩だ     都築直美(三席)
  僕の何かが
  君を呼ぶ
  おいで おいで
  魂の話 しよ

 月の蒼い晩がミステリアスで霊的な感じ。おいでおいでに引き込まれる、しようでなく”しよ”が効いている。僕と君は置き換えられるのではという意見も。作者は、通りいっぺんの話ではなく、精神の深い深い奥の話をしたいと。推敲しての”しよ”とのことです。
 コーヒーブレイクの後は、五行歌誌十一月号から、各自三首選び感想を述べあいました。



[5] 『五行歌』一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2019年 1月 7日(月)23時12分22秒 p3469080-ipngn19901marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:紫かたばみ

 十一月五日(月)
 池上本門寺にお参りし、菊花展を楽しんでさあ、淹れたてのコーヒーいただきつつ八人で二時~五時まで濃い時間の始まりです。

  想像力の       一 歳(一席)
  靱やかで勁い翼を
  羽搏かせる筋
  不屈の意志のごとき骨を
  吾に鍛えしめよ

 ルビがないと読めない漢字もありますが、分かり易くその力強さ、吾に鍛えしめよ!と神にさえ要求する真剣な表現者としての思いに皆さん感動でした。作者は人に寄り添うには、想像力が必要、想像力に余分な脂肪を付けないよう鍛えたいと。

  お前はどっちだ!       紫かたばみ(二席)
  嵐が問う
  踏ん張って耐えるのか?
  ひらりくらりかわすのか?
  一番脆いのは 半端な奴

 一行目の問いかけがインパクトある。自分もそっくりの歌を作ったが五行目にどっちだ! を置いてしまった。四行目がのらりでなくて、ひらりなのがいい。作者は先日の台風体験し半端な自分に活を入れるつもりで作りました。

  待つことも         木村美惠子(三席)
  待たれる事もなく
  ひとり
  味わう
  人生の黄昏

 スッキリ無駄のない表現で味わうという前向きさ、人生の黄昏で止めた所が余韻があっていい。二行目の“事”がひらがな表記の方がいいのではという意見もあったが、まさに一人暮らしの達人の歌です。作者は待っているのは猫だけですと。
 第二部として、五行歌誌十月号より良いと思う三首を各自選び感想を述べあいました。それぞれの好みの二十六首がでましたが、柳瀬丈子さんの歌を選んだ方が多かったです。



[4] 『五行歌』十二月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2018年12月 4日(火)07時18分39秒 p7230145-ipngn33801marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:旅人

 十月八日(月)
 湿度を含んだ曇天の中を、ワクワクしながら会場の「豆豆」へ向かう。ゲストに田川さんをお迎えして八名の出席者。司会は紫かたばみさん。

  やさしく ありたいわたし
  でも ほんとは
  臆病なだけ だって
  やさしさは 徳の中で
  最も 自分本位      紫かたばみ(一席)

 やさしさは何? 各々が自分に問いかける言葉が溢れてメモを取る暇もない。何故自分本位なのか、生き方を模索する姿が見えてくる歌と高得点。空きの使い方が効果的の評も。作者は臆病だから傷つきたくなくて優しくする、その思いに、書き留めていた言葉「やさしさは自分本位」を加えて作品にしたと語っていた。

  正直に書くのは      田川宏朗(二席)
  当たり前として
  ひとに
  寄りそうことの
  なんという難しさ

 寄りそうとは何? 皆の思いが吐露されていく。同じ思いの幸福な化学反応は歌会にも興る。作者は、席を譲ったセールスマンへの応援の五行歌を推敲し続けるうちに違いを感じた。そして、人に思いを近づける歌を詠みたいと願って歌ができたと語っていた。

  人生が         都築直美(二席)
  一夜の夢なら
  ありがてぇ
  今宵 素敵な
  狂人と なりたし

 文体の巧みさ、鴨居玲の絵と言葉を連想させる、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第二番「一夜の悪夢」を彷彿させる魂の飛翔等々。出席者の想像はどこまでも広がっていく。作者は、鴨居玲の描く酔った老人のイメージを抱きながら、『閑吟集』の「…ただ狂へ」の返歌として詠んだと語っていた。

  闇を/知る人の/灯りが/細く くっきりと/見える     旅人(三席)

 歌会の後で、美味しい珈琲を飲みながら秀歌集3を寸評した。今月は「空き」の巧みな作品が多かったので、空きの効果も話し合った。



[3] 『五行歌』十一月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2018年10月31日(水)15時29分14秒 p2055211-ipngn17001marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:コバライチ*キコ

 九月三日(月)
 朝から、台風二十一号が四国から関西に上陸するというニュースでもちきり。小雨混じりの蒸し暑い中、歌会は白熱。点を入れていなくても、皆で言いたい放題。言われる側も、より良い作品に改作すべく聞く耳をもって話し合うという、生きた歌会を体感しました。

  燃えなければ         紫かたばみ(一席)
  光はないーでも
  不燃物のわたしは
  わたしを磨き鏡のように
  光届ける人となる

 作者の思考の流れ、意思の強さが伝わってくる。自らを不燃物と言い切りながら、光らせる側になるという純粋な気持ちに打たれたという意見が多数。「燃えなければ光はない」とはあるハンセン病者の言葉だが、この言葉にひそむ情熱を池上サロンのメンバーにも感じて、自分のエネルギーにしたいという作者。最後の朗読時、四行目の「わたしを磨き 鏡のように」と文節が割れることがわかり、字空き、改行についてしばし議論が起こった。

  転轍機を/変えると/景色が一変して/新しい/生き方が始まる   旅 人(二席)

 ポイントでなく転轍機という言葉に迫力を感ずる。景色の変化と生き方を結び付けた、切れ味のいい作品。二行目の「変える」は「換える」ではないか? 「切り換える」としたほうがより意味が近いのでは? という意見も。作者は、自分の人生の転換期からのことを踏まえて詠んだが、もう少し推敲したい、と。

  白地に/白で描かれた/白描/無限の色を沈潜させて/ただ在る〈白〉   一 歳(二席)

 五行の中に「白」が四つも出てきているのに、それぞれの白の存在感がある。白描とは墨で描かれた絵だが、白で描かれたとは如何に? ただ白といっても、黒と同様、その中にはすべての色が内包されていて、作者はここにその色を見ているのだろう。それは「無」と言い換えることができるかもしれない。

  サヨナラの/握手のつもりが/ハグされた/何んと/温かいのだろう   木村美惠子(三席)

 カタカナの使い方が軽やかで効果的。素直に、言いたいことをストレートに詠まれていて、読後感がいい。「何んと」は「なんと」でいい。作者の実体験に基づいた作品。
  



[2] 『五行歌』十月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2018年10月 4日(木)22時54分16秒 p7958068-ipngn38701marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:都築直美

 八月六日(月)
 連日続くうだる様な暑さにもめげずに十名の歌人にご参加頂けました。
 奇しくも、八月六日は広島に原爆が投下された日。今回は、昭和二十年八月六日広島において六歳で被爆経験をされた木村美惠子さんにもご参加頂き、特集「八月六日から」を拝読しながら思いを語り合いました。
 被爆された方々、戦争で犠牲になられた方々に哀悼の意を込めて皆で黙祷。
 その後、通常歌会に入りました。

  体験した事が          木村美惠子(一席)
  良いか 悪いか
  判らない
  原爆投下の下を
  逃げ回ったこと

 ご本人が小学一年生(六歳)の広島での被爆経験をそのまま歌にされたとの事。原爆の恐怖、強烈なリアリティが読み手に迫って来て有無を言わせない。

  哀しみは            旅 人(二席)
  独りで
  抱くもの
  吐息の中に
  潜ませ

 共有したつもりでも哀しみは人には分けられない。自ら抱えるしかない自分自身だけのもの。文学的ロマンを感じさせる、作者渾身の新境地。

  わたしは            紫かたばみ(三席)
  憎しみから
  産まれたとしても
  憎しみの根源を知り
  連鎖を断つ事はできる

 ふと観た、(日本人の父親を持ち、壮絶な過去を経験したインドネシアの女性のドキュメンタリー番組)に心打たれできたとの事。「血のつながり」とは? 「生きる」とは? 考えさせられる五行。

  人籟を聴けぬものが        一 歳(三席)
  どうして
  地籟 天籟を聴けよう
  汝
  天地人の聲を聴け

 目先の利益のみを求め自然を傷め続ける人間、じっくりと立ち止まりものを感じようとしなくなった人間、それらに対する警鐘。まさに…哲学的な五行。





[1] 『五行歌』九月号歌会レポート

投稿者: 一歳 投稿日:2018年10月 2日(火)16時37分52秒 p3894100-ipngn21201marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

レポート担当:コバライチ*キコ

 七月二日(月)
 梅雨明け早々の炎天下。雲ひとつない夏空を見上げながら、池上本門寺の先にある会場へ。前半は、三月号特集(コバライチ*キコ)の作品から、参加者それぞれが好きな三首を選んで講評を述べ合う。普段、生の声が聞きにくい特集をこうして取り上げる歌会は、歌人の作品批評力が育っていくと感じた。

  束縛の鎖を         旅 人(一席)
  引きずりながら
  宙を目指す
  飛び立つのは
  自由だ

 わが身、わが心を束縛する鎖とは物理的には時間であり、精神的な何かであるかもしれない。最初の二行がロックである! ラストのまとめ方が鮮やかで、遠くまで飛んでゆけそうな力を感じる、と高評価を受けた。日常生活において「思うこと」だけは自由だが、しかし、それは本当か? 私たち、本当に自由に飛び立てるのかどうか考えながら作った歌です、と作者。「宙」は「そら」と読む。

  人生の荒波に         都築直美(二席)
  揉まれ
  丸くなった 石
  でも…その石の真ん中には
  マグマが あるんだよ

 石の描写がまるでひとの一生のようだ、噴火しそうな熱い恋心を表している、四、五行目の言葉に納得した等、人間に置き換えて読まれた作品。のんびり生きているようでも、譲れないところがある厳しい求道の心を忘れないでいたいという作者の思いから書かれたそう。「終わり方」の追究でもある。

  水面に踏ん張る       コバライチ*キコ(三席)
  水馬*        *あめんぼう
  さしずめ
  ダリの
  奇妙な戦闘士か

 水面とアメンボからシュルレアリスムの画家ダリを発想するイメージがおもしろい、工夫が生きている。三行目の「さしずめ」の選択が効いているとの評。毎年、水張田で目にする光景だが、よく見ると、水面に映った空に乗っかる生きものの形は不思議である。


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