レポート担当:武藤義子
三月一日(火)
今回はいつもの会場が、ワクチン接種の為使用できなくなりました。リアル歌会を開きたいと会場を探し、池上サロンを始めた「豆豆」を会場にしてミニランチ付きで一時~四時まで歌会を開きました。
採点は一人四首を選びました。上位三首。
人生は 沙 羅
シーソー
喜と哀
禍と福
生と死
人生における喜びの裏に哀しみがある。禍と福は順にやってくる。生の延長線上には死がある。それはシーソーのようである。と作者の言葉です。喜怒哀楽や生と死について、話が盛り上がりました。
宇宙の涯を極める 雅蘭洞
人類の叡智
中性子を解明する
人類の叡智
不戦の叡智は如何
人類は百万年以上かけて素晴らしい文明を築き上げました。しかし”争”についての知恵は、未だに類人猿以下なのでしょうかと作者は話されました。不戦では現にウクライナで戦争が行なわれています。不戦の叡智は如何の五行目に関心が集まりました。
「黙浴」 武藤義子
大きな貼紙
銭湯は温泉
じんわりと私は
潤*びていく *ほと
コロナ禍の銭湯は飛沫感染を防ぐ為、「黙浴」と書かれた貼紙があちこちにある。湯音が聞えるだけ。ゆっくりと身も心もゆるむ一時を詠みました。一行目にカギ括弧で黙浴と書かれたことで、コロナ禍だという事がわかるので良い。
レポート担当:旅人
二月七日(月)
東京の感染者数が一万二千人を越えて過去最多となった月曜日、十九時から二十一時までライン歌会を開いた。在宅で歌会が開けるのはコロナ禍でも有難い。出席者の声だけだが元気が出る。ゲストに旅卯さん、大島健志さん、コバライチ*キコさんの三人をお迎えして十名の出席者だった。
眠れぬ 武藤義子(一席)
冬の夜半
じーんと静けさが
音をたてて
耳に入って来る
音のない音の表現が良いと高得点だった。作者は底冷えの京の夜半、冷えきった空気が震える様にじーんと音となって、真っ直ぐ耳に入って来た体験を詠んだそうです。
コトバより コバライチ*キコ(二席)
カラダが先に
踊るらしい
喜怒哀楽の
根っこが疼く
片仮名遣いが印象的と好評だった。作者は、大好きな田中泯の言葉から歌が生まれたそうで、体が反応して躍る、その感情の元を「疼く」と言葉にして、ようやく納まったと語っていた。
波に逆らわず 沙 羅(二席)
波に乗る
いつか
きっと
凪が来る
「凪」の言葉に惹かれたと好評だった。作者は、コロナという大海に逆らわず、終わる日が来る日まで、やり過ごそうと希望を詠んだそうです。
四席は作品のみ紹介します。
ありがとう/我々は/善意で生きる/生物/人間 旅 卯
抗がん剤で/12 ㎏痩せた兄/泣きそうになったけど/あんまり祖父*ちゃんに似てて笑いそうになる
*じい 紫かたばみ
きみに/出会えてよかった/あの世でまた/なんか楽しいこと/しよう 大島健志
時には大胆/時には囁き/時には惑わす/君の歌に/夢中 旅 人
レポート担当:沙羅
一月十日(月)
二〇二二年の新年歌会は、ゲストの方三名がみえて、少し改まった気分で始まりました。いつものメンバーに数名の方たちが加わっただけで歌会は活性化し、違う景色が見えました。
午前2時に いわさきくらげ(一席)
鳴くカラス
だれの
心を
つついているのか
帰省した際に寝つけずに聞いたカラスの鳴声をヒントに詠まれたとか。午前2時と二ではなく2を使ったのが効果的でした。
嗅覚を 旅 人(二席)
研ぎ澄まし
心の欲する
本を探す
私は狩人
作者は、本屋さんで書棚を巡りながら真剣に本選びをする自分は、まるで猟犬だと思ったそうです。
あなたの窓からは、 明槻陽子(二席)
そんな景色が見えるのね。
沢山の今を
体感できる
歌の世界
フェイスブックの五行歌を読んで、沢山の歌の世界を体感出来た喜びを表しました。
酒が呑めるから 紫かたばみ(三席)
大人じゃない
惨めさを どれだけ
呑み込めるかだ
自分のではなく 他人の
上から目線ですが、成人の日に大人の心構えを歌ってみました。
レポート担当:沙羅
十二月六日(月)
コロナに振り回されているうちに、早、師走を迎えました。いつもの歌会に加えて、第三十一回の全国文書大会入選歌もとり上げました。令和三年を締めくくる充実した歌会でした。
甦る声音 沙 羅(一席)
反戦を説く寂聴さん
九条を守る会
そこに
私もいた
瀬戸内寂聴さんが九十九歳の命を使いきって亡くなりました。あの甲高いお声はもう聞けません。彼女の反戦の志を受け継がなければと思って詠みました。
青い春の山に登り 雅蘭洞(二席)
朱い夏の海に泳ぎ
白い秋風に襟立て
玄い冬空に凍えて
死は生の了と知る
作者は人生百年の盛衰を四季に例えて詠まれたそうです。五行目、韓愈の詩のように、棺の蓋をして人生は完成するのです。
やさしい 紫かたばみ(三席)
ピンクの
皇帝ダリア
見下*ろしているけど *お
見下*していない *くだ
背が高く花も大きいから皇帝ダリアという名前がつきました。でもやさしい花姿には皇帝の威圧感はありません。
レポート担当:大箭佐代子
十一月一日(月)
木々の葉が色づく秋を迎えゲストの菊地牧子さんも交えて十人の歌人達が集い和やかに歌会が開かれました。
富士山を 紫かたばみ(一席)
すべり台にして
ぴゅーと
冬が
降りてきた
「ぴゅーと」と楽しい表現、ユニークで気持ちの良い歌、童謡の世界、スケールの大きさ、子どものつぶやきを歌にした作品と皆さんの感想でした。作者のコメントは、急に冷え込んだ日に雪化粧した富士山がくっきり見えました。そんな姿をみて、いつか公園で聞いた「お山からぴゅーってくるんだよ」と言う幼子の言葉を思いだして、作りました。
病む友の 武藤義子(二席)
重たい言葉
赫赫と燃える
夕日に
焼べたい
赫赫との表現が素敵、重たい言葉、病む友の切なさも伝わってくる。焼べたいとの表現が素晴らしいと皆さんの感想でした。作者のコメントはいくつもの病を抱えた友のいらだち、くやしさ生死についての言葉が重たく抱えこめず赫い夕日に託す。
孤独の 沙 羅(二席)
原石を
彫れば
真の己
顕れる
型のみごとさ、歌のイメージがすごい、真面目に自分と向き合っている。作者の感じかたが正直である。皆さんの感想でした。作者のコメントは孤独を原石に見立てて彫っていったら自分の隠された部分にたどりつきました。
ひたすら 旅 人(三席)
朽ちていく
切り株の
傍らに
ポッチリと芽が
ポッチリが愛おしい、古い滅びていくもの新しいもの、世代交代、思ったことと言葉を一致させた。皆さんの感想です。作者のコメントは、何も語らず崩れていく大きな切り株から小さな芽! その愛しさを詠みました。