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  • [14]
  • 作品評(2019年5月号)

  • 投稿者:大島 健志
  • 投稿日:2019年 9月 6日(金)21時22分48秒
  • 110-232-30-121.fnnr.j-cnet.jp
  • 返信
 
違和感に蓋をして
口角あげて
背中で中指たててる
そんな自分に
ゾクゾクするわ

自分で自分を
騙している
自覚はちゃんとあるから
大丈夫
まだ冷静だ

稲本 英
22p.
228-229p.

 どちらも「自分で自分を騙している」ことについて詠っているお歌だと思う。面白いのは、どちらも「自分を騙している自分」を「さらに客観視している自分」の目線で詠われていること。前者はそんな自分に恍惚としており、後者は少し正気を失いかけている様子が見て取れる。作者に自分を騙すことを強いている存在が何なのかまでは読み取れなかったが、独特の魅力を放つお歌達だ。


ほんとうに
よいことばは
たぶん
どこぞでだれぞが
すでにつことる

高原郁子(こうげんかぐわし)
38p.

 確かにその通りだと思う。誰かの人生の糧になるような「本物の良い言葉」はもうすでに誰かが紡ぎ、残していることだろう。でも個人的には「誰かにとって必要となる言葉」というのは時代とともに変化していくものだと思う。だから、我々は、自分自身を含む、今を生きる人達に向けて、必死に言葉を紡ぐのだろう。結論ではなく前提として、大切なことを教えてくれたお歌。方言での表記も効いている。


暗黒の
未来に
なっちまったな
だが
それでいい

堀川士朗
127p.

 どこかデカダンスを匂わせる、破滅的で毒のある作者の書く五行歌が大好きであったが、作者は今号限りで五行歌の会を退会されてしまった。わりと筆者と年齢も近く、共鳴する部分も多かっただけに、ショックが大きかった。ほんの一瞬ではあるが、私も会を退会することを真剣に考えたほどだ。今後は表現するジャンルは変わってしまうが、これからもお互いに刺激を与え合えるような存在でいたいと願う。暗黒の未来で祝杯をあげたい。


虐待 ネグレクト
私にだって
その芽は
潜んでいると思った
子育て時代

村松清美
164p.

 児童虐待のニュースが流れるたび、多くの人は加害者の残虐非道さを責め立て、「信じられない」「理解できない」と自分とは関係ない問題として捉えてしまいがちだと思う。しかし、このお歌は自分にも加害者になる可能性があったことに正直に言及し、虐待・ネグレクトといった問題を、特別な事情を抱えた人だけの問題ではなく、自分自身に引き寄せて捉えているところに、勇気と潔さを感じた。


信じよう
お互いに
失ったものを
与えられた
仲なのだ

しん
175p.

 「お互いに失ったものを与えられた仲」というのは色々な解釈ができそうだ。作者とその相手はわかりやすい関係性ではなく、色々あった仲なのだろう。それを具体的に説明することなく、簡潔な言葉で表現することで、読み手に想像の余地を残しているところに惹かれた。能動的な「信じよう」という一行で始まるところもいい。


悩む相手に
自分の古傷を
特効薬のごとく
語っている
ん、卑しいぞ

吉川敬子
189p.

 これは私もよくやってしまいがちなことなので、大いに共感した。悩みは人それぞれのはずなのに、かつて悩んだ経験がある人は、自分自身の経験談が、今悩んでいる人へのヒントになるはずだ、と信じて疑わないところがある。これは、私も善意のつもりで知らず知らずのうちにやってしまうことがあるが、悩んでいる当人からしてみれば、自分の悩みを相談したはずが、いつの間にか相手の体験談にすり替わっているのだから、「きちんと自分の話を聴いてくれていない」と感じる可能性もあるだろう。作者の仰る通り、こうした行為は卑しいのかもしれない。今後は気を付けようと思った。


毎年の
梅の香を
くぐり抜け
父の匂いの消えた
家に入る

三隅美奈子
222p.

 年月の巡りと、かつてそこに居た人の追憶とを「香り」と「匂い」とを用いて、非常に巧みに描かれている。まるで、良質の短編映画を観た後のような余韻が残る。お父上との別離からはある程度の年月が経ったことが伺え、感傷的でありながら、それでも季節がまた春に向かってゆくことの前向きさも感じられる。この塩梅がたまらない。


四百人の聴衆より
たった一人の暗闇へ
語りかける方が合っています
音訳再開
頑張れ自分

板東和代
233p.

 「たった一人の暗闇に語りかける」という表現に惹かれた。音訳については知識が無かったので、ネット検索で少し調べて知ったのだが、目の不自由な方達向けに、活字の本などを読み上げて録音図書などにまとめる作業のことのようだ。「暗闇」とは文字通り目が不自由なことも指しているのだろうし、心の暗闇のことも指しているのであろう。こうした取り組みはもっと広がって欲しいと思うし、私も作者を陰ながら応援したくなった。


ついに来たか
老々看護の
二人三脚
助け合い行くぞよ
ゴールまで

堀内 力
272p.

 社会問題ともなっている老々介護のことをあくまで、前向きに描いている点に惹かれた。「二人三脚」や「行くぞよ」という表現もいい。介護のゴールとは、すなわち人生の終わりに他ならないが、こういった達観した明るくて前向きな高齢の方の死生観に触れるにつけ、自分もこういう歳の取り方をしたいなあと思わされる。


貴方のせいだと花が言う
お前が悪いと風が言う
散らせる風も散りゆく花も
御互い引かれ合い縺れ合いながら
罪を背負ってこの世に生きる

辻 あい子
273p.

 「花」が女性、「風」が男性の象徴であろうか。ちょっと演歌調な世界観にも思えて、不思議な読後感を覚えた。「花が散る」とは破局の暗示のことか。それでも、花も風も、引かれ合い、縺れ合いながら、「罪を背負ってこの世に生きる」という。一筋縄ではいかない、オトナの男女観という感じがする。今までの五行歌の世界ではあまり類を見ない感性をお持ちの方だとお見受けした。今後も注目してゆきたい。


いつも
新しいいのち
今日は
あなたに
会った

草壁焔太
274p.

 何を言っても蛇足になってしまいそうな、流石と言うほかないお歌。そうなのだ。いのちは生きている限り、いつも今日が一番新しい。そのことを感じさせてくれるような「あなた」という存在が居て、その方に「会った」ということ。当たり前のようでいて、奇蹟のような巡り合わせ。ちいさな幸せを噛みしめて生きる様子が伝わってきて、あたたかい気持ちになる。


彼の身体は
礼拝堂であった。
深奥な喉から
高い鼻の塔を抜け
呼吸は歌になった。

マイコフ
276p.

 作者については詳しく存じ上げないが、ちょっと日本人離れした感性の持ち主だと感じる。英詩の日本語訳を読んでいるような感覚にも陥る。句読点の使い方も効いている。構成も言葉選びも巧みで、荘厳なイメージを読む者に抱かせる。最後の「呼吸は歌になった。」という締め方も好み。


グリムスパンキー
「大人になったら」
久々に感じた
この衝撃
まさに私の青春

加藤温子
324p.

 まさか雑誌『五行歌』でGLIM SPANKYの名前を見る日が来るとは!GLIM SPANKYとは、筆者もファンである二人組のロックユニットであるが、その中でも「大人になったら」という曲を選ぶあたりが、実にわかってらっしゃる、という感じ。筆者はもっとポップな「リアル鬼ごっこ」という曲が一番好きなのだが、「大人になったら」はスローテンポで過ぎ去りし青春を歌っている名曲だ。好きなアーティストのことをストレートに詠っているところがよく、アーティストを知っていると余計に共感できて二度美味しい。書いてくれてありがとうございます、と言いたくなるお歌。


(了)


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